生成AIを導入したものの、「作業は少し楽になったが、売上や顧客への価値にはつながっていない」と感じていませんか。

総務省の調査では、生成AIを何らかの業務で利用している日本企業は86.4%に達し、米国やドイツとほぼ同じ水準になりました。一方で、IPAの調査では、AI導入の効果として「売上や利益が向上した」を挙げた企業は3.9%でした。PwC Japanグループの調査でも、生成AIの効果が「期待を大きく上回った」日本企業は9%で、比較した6カ国の中で最も低い結果です。

AIの活用が広がった今、その効果を業務効率化にとどめず、売上や顧客価値の向上といった事業成果につなげることが次の課題です。この記事では、2026年に公表された公的機関・調査会社のデータをもとに、日本企業のAI活用の現状と、成果を分けている「導入した後」の取り組みを整理します。当社が定期的にお届けする「secondz AI活用レポート」の第1回です。

※ 本記事の数値は、2026年10月時点で公開されている各調査の公表資料をもとにしています。調査ごとに対象企業や設問が異なるため、詳しくは記事末尾の参照データをご確認ください。

  • 生成AIを1つ以上の業務で利用している日本企業は86.4%。前年度の55.2%から大きく伸び、海外との差は小さくなった(総務省)
  • AI導入の効果は「業務の効率化・迅速化」が91.6%。「売上や利益の向上」は3.9%にとどまる(IPA)
  • 生成AIの効果が「期待を大きく上回った」日本企業は9%で6カ国中最低。効果を「まだ評価できていない」企業も13%ある(PwC Japanグループ)
  • 生成AIによる業務変革に「組織的な取り組みはない」日本企業は27.0%。米国は1.4%(総務省)
  • 効果が大きい企業は、AIを業務プロセスに正式に組み込み、経営に近い推進体制や内製で運用できる体制を整えている(PwC Japanグループ)

1.生成AIの利用は、海外と肩を並べる水準に

総務省「令和8年版 情報通信白書」によると、自社の何らかの業務で生成AIを利用している日本企業の割合は86.4%でした。前年度調査の55.2%から30ポイント以上伸びています。

国2025年度調査2024年度調査
日本86.4%55.2%
米国90.9%90.6%
ドイツ91.6%90.3%
中国98.1%95.8%

出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」(生成AIを一つ以上の業務で利用している割合)

会社としての方針づくりも進んでいます。生成AIを「積極的に活用する方針」「活用する領域を限定して利用する方針」と答えた日本企業は合計68.9%で、前年度の49.7%から大きく上昇しました。

PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2026 春」でも、日本企業の生成AIの活用・推進度は87%で、前回から11ポイント上がっています。米国90%、英国89%、ドイツ89%と比べても大きな差はありません。「使っているかどうか」という点では、日本企業は海外とほぼ同水準に達しています。

2.しかし、効果の中心は「効率化」にとどまる

利用が広がる一方で、効果の中身には偏りがあります。IPA「DX動向2026」によると、AI導入による具体的な効果として「業務が効率化したり迅速化した」を挙げた企業は91.6%でした。これに対し、「顧客満足度が向上した」は4.5%、「売上や利益が向上した」は3.9%です。AIは作業時間の短縮には役立っていても、顧客や事業の成果にまで結びついている例はまだ多くありません。

PwC Japanグループの調査からも、同じ傾向が読み取れます。

  • 生成AIの効果が「期待を大きく上回った」日本企業は9%。米国38%、英国32%と大きな開きがある
  • 効果が「期待通り」以上だった日本企業は64%で、前回から3ポイントの伸びにとどまる
  • 効果が「期待未満」だった日本企業は19%
  • 効果を「まだ評価できていない」日本企業は13%。米国は0%
  • 1年以内に効果が出ると想定している企業は、米国66%に対し日本は41%

効果をまだ評価できていない企業が一定数あることも、日本の特徴です。効果を評価できなければ、改善にも投資判断にもつなげられません。

3.差を生むのは「導入した後」の取り組み

導入したAIが成果に結びつかないのは、日本だけの課題ではありません。S&P Global Market Intelligenceが北米・欧州の企業を対象に行った2025年の調査では、PoC(試験導入)の平均46%が本番運用に至る前に打ち切られていました。

では、成果を出している企業と、そうでない企業は何が違うのでしょうか。総務省の白書からは、AI導入後の組織的な取り組みや環境整備において、日本企業と海外企業の間に差があることが分かります。特に、組織としての取り組みと、AIが社内データを参照できる仕組みで大きな差が見られます。

組織としての取り組みに差がある

生成AIによる業務変革の取り組み状況日本米国ドイツ中国
全社横断的に事業変革やイノベーションに取り組んでいる21.5%35.6%20.7%40.9%
各部署で業務の最適化や価値向上を行っている32.4%40.6%48.1%32.0%
個人の生産性向上に組織的に取り組んでいる11.7%22.1%26.0%23.8%
組織的な取り組みはない27.0%1.4%4.9%2.6%
わからない7.4%0.4%0.4%0.7%

出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」(生成AIによる業務変革に関する組織的な取組状況)

日本では、生成AIを使っていても、その活用が個人任せになっている企業が少なくありません。「組織的な取り組みはない」が27.0%にのぼるのに対し、米国・ドイツ・中国はいずれも5%未満です。

データと人材の環境整備に差がある

業務変革のための環境整備日本米国ドイツ中国
生成AI活用検討に向けた予算や人員が確保されている37.4%50.0%41.5%50.2%
業務プロセスの見直しやAI活用に必要なスキル・ノウハウを学ぶ環境がある39.9%62.7%60.4%71.7%
専門家によるアドバイスやサポート体制がある22.1%27.2%25.6%24.6%
分析・活用可能な社内データの整備が進められている26.1%33.0%27.4%44.0%
生成AIに社内データを学習させたり、参照可能なデータベースを構築したりしている24.5%57.2%54.4%73.0%
社員がAIアプリやAIエージェントを開発できる技術環境にある15.3%22.1%27.4%31.1%
特に実施している施策はない・把握していない19.9%0.7%0.7%0.3%

出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」(生成AIによる業務変革に関する環境整備の状況)

特に差が大きいのは、AIが社内データを参照できる仕組み(日本24.5%、米国57.2%)と、活用スキルを学ぶ環境(日本39.9%、米国62.7%)です。AIが自社の情報を使えなければ、出力は一般論にとどまります。使い方を学ぶ場がなければ、活用は一部の得意な社員に限られます。利用率では並んでいても、AIを業務に組み込むための土台ではまだ差があります。

4.成果を出している企業に共通すること

PwC Japanグループの調査では、生成AIの効果が期待を大きく上回った企業の特徴として、次の点が挙げられています。

  • 経営に近い推進体制を整備している
  • AIを業務プロセスに正式に組み込んでいる
  • AIエージェントを導入している
  • 複数のAIモデルを使い分けている

さらに、AI活用によって得られた成果を、従業員への利益還元や顧客への価格還元につなげている企業では、内製で運用できる体制の整備や、企業ブランドを含めた活用指標の採用を重視する傾向があるとされています。こうした還元まで進んでいる日本企業は40%で、米国75%、英国74%を大きく下回りました。

総務省の白書でも、AI活用で先進的な取り組みを進める企業へのヒアリングから、次のような共通点が示されています。

  • 経営層がAIの有効性を認識し、優先的に活用すべき事業領域を明示している
  • AI活用を前提に業務を見直し、人間とAIの役割分担を設計している
  • 事業部門の現場のニーズや課題意識を検討の起点にしている
  • AIを使える共通基盤を整え、社内システムや社内データとの連携を進めている
  • 人材育成、利用ガイドライン、評価の仕組みづくりを進めている

どちらの調査も、ツールの選定より、AIを業務と組織にどう組み込むかを重視している点で一致しています。

5.「導入した後」に取り組みたい5つのこと

ここまでのデータと、当社がAIの実装・定着を支援してきた経験をもとに、導入後に取り組むべきことを整理します。

(1)AIを業務の流れの中に組み込む

新しいツールを別に立ち上げるより、社員が毎日使っている業務の流れの中にAIを組み込むことが定着につながります。どの工程をAIに任せ、どこで人が判断するのかを、業務プロセスとして決めておくことが出発点です。

(2)AIが社内データを使える状態にする

白書で海外企業との差が特に大きかった項目の一つが、AIが社内データを参照できる仕組みです。社内の資料やデータをAIが参照できるようにすると、出力が自社の業務に合ったものになり、使われる場面が広がります。

(3)効果を測る軸を、導入前に決める

日本企業の13%が効果をまだ評価できていません。削減時間だけでなく、提案の質や顧客満足、売上など、何をもって成果とするかを企画の段階で決めておくと、改善と投資判断がしやすくなります。

(4)生まれた時間の使い道を決める

効率化で生まれた時間を、顧客理解や企画など付加価値の高い仕事に充ててはじめて、効果は売上や顧客価値に届きます。創出した時間を新たな価値につなげる設計が必要です。

(5)学ぶ場と推進体制をつくる

活用を個人任せにしないために、使い方を学べる場と、部署を越えて活用を進める体制を整えます。経営に近い位置に推進役を置くことで、優先すべき業務の判断も早くなります。

事例:アサヒ飲料株式会社 営業提案資料の作成自動化

当社は、アサヒ飲料株式会社 広域量販営業部と、営業提案資料の作成を自動化するシステムを共同で開発しました。約半年の実証実験(PoC)と約1年の本番開発を経て完成したものです。

開発で重視したのは、現場で使われ続けることでした。新しいツールを別に導入するのではなく、営業担当者が使い慣れたPowerPointの「アドイン」という形にこだわり、提案資料作成の主要工程を自動化しました。いつものPowerPoint作業の延長で提案資料が仕上がるため、新しい操作を覚える負担を抑えられます。

アンケート調査では、月間約90時間の「考える時間」を創出する効果が確認されています。今後、各支社への普及が進むと、年間4,500時間程度の時間創出が見込まれています。

この取り組みは、時間を減らすことがゴールではありません。生まれた時間は、取引先のカテゴリー課題を深く掘り下げ、カテゴリー成長の戦略を考えることに充てられています。システムが定型的な作業を担い、人が考えることと戦略づくりを担う。前章の(1)と(4)を実践した例です。

導入事例の詳細:https://secondz.digital/case/asahiinryo01/

事業開発責任者のコメント

「AIの導入が広がった今、企業の競争力を左右するのは『AIを使っているか』ではなく、『業務や事業成果をどう変えられたか』だと考えています。私たちが企業のAI実装を支援する中で重視しているのは、AIを既存の業務プロセスにどう組み込み、必要なデータとどう連携させ、人とAIの役割をどう設計するかという点です。さらに、効率化によって生まれた時間を顧客理解や提案品質の向上といった付加価値の高い活動につなげ、その成果を継続的に検証・改善していくことが重要です。AIを単なる効率化の手段から、企業の持続的な競争力へと転換するための視点を、本レポートを通じて発信していきたいと考えています。」

(secondz digital株式会社 宮薗 翼)

日本企業のAI活用に関するよくある質問

Q:日本企業の生成AIの利用率はどのくらいですか?

総務省「令和8年版 情報通信白書」では、生成AIを何らかの業務で利用している日本企業は86.4%です。前年度の55.2%から大きく伸び、米国(90.9%)やドイツ(91.6%)とほぼ同じ水準になっています。

Q:AIを導入しても成果が出ないのはなぜですか?

多くの企業で、AIの効果が作業の効率化にとどまっているためです。白書では、生成AIによる業務変革に「組織的な取り組みはない」日本企業が27.0%あり、AIが社内データを参照できる仕組みを整えている企業は24.5%にとどまります。活用が個人任せになり、業務の仕組みに組み込まれていないことが、成果が出にくい理由の一つと考えられます。

Q:AI活用で成果を出している企業にはどんな特徴がありますか?

PwC Japanグループの調査では、経営に近い推進体制があること、AIを業務プロセスに正式に組み込んでいること、AIエージェントの導入や複数モデルの使い分けをしていることが特徴として挙げられています。ツールを選ぶことよりも、AIを業務と組織にどう組み込むかが差になっています。

Q:AI導入の効果はどのように測ればよいですか?

導入前に、何をもって成果とするかを決めておくことが大切です。削減できた時間だけでなく、提案の質や顧客満足、売上など、事業につながる指標も軸に加えます。PwC Japanグループの調査では、日本企業の13%が効果をまだ評価できていません。

Q:効率化で生まれた時間はどう活用すればよいですか?

顧客理解や企画、提案の質を高めるといった、人にしかできない付加価値の高い仕事に充てるのが効果的です。当社が支援したアサヒ飲料の事例では、提案資料作成の自動化で生まれた時間を、取引先のカテゴリー課題を掘り下げ、戦略を考えることに充てています。

まとめ

日本企業の生成AI利用は、海外と並ぶ水準まで広がりました。次に問われるのは、そのAIを業務と組織にどう組み込み、事業の成果につなげるかです。各調査のデータは、成果の差が「導入した後」の取り組みから生まれていることを示しています。

最後に、導入後に取り組みたいことをもう一度整理します。

  • AIを、社員が毎日使う業務の流れの中に組み込む
  • AIが社内データを参照できる状態にする
  • 効果を測る軸を、導入前に決める
  • 生まれた時間の使い道を決める
  • 学ぶ場と、経営に近い推進体制をつくる

secondz digitalは、AI戦略の策定から、AIエージェントの設計・構築、業務への導入と定着まで、企業のAI活用を一貫して支援しています。AIを導入したものの成果につながっていない、どの業務から組み込めばよいか分からないといったお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

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「secondz AI活用レポート」について

企業のAI活用の現状と課題を、公的機関や調査会社が公表したデータから読み解き、定期的に発信するレポートです。今後は当社独自のアンケート調査も交えながら、AI活用を成果につなげるための論点をお届けします。

参照データ

  • 総務省「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月)対象:日本・米国・ドイツ・中国の企業
  • IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX動向2026」(2026年7月)対象:国内企業1,799社(2026年4〜6月)
  • PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2026 春 6カ国比較」(2026年6月)対象:売上高500億円以上の企業の課長職以上。日本932名を含む6カ国(2026年2月)
  • S&P Global Market Intelligence「Voice of the Enterprise: AI & Machine Learning」(2025年)対象:北米・欧州の1,000人超

※各調査は対象企業・調査方法・設問が異なるため、異なる調査の数値どうしは直接比較できるものではありません。

※本レポートは上記の公表データを当社が整理・解説したものです。各数値の詳細は、各調査の公表資料をご確認ください。